かげきしょうじょ!!

かげきしょうじょ!!リレー連載 第5回 [星野 薫役 大地 葉 × 沢田千夏役 松田利冴 × 沢田千秋役 松田颯水] かげきしょうじょ!!リレー連載 第5回 [星野 薫役 大地 葉 × 沢田千夏役 松田利冴 × 沢田千秋役 松田颯水]

――物語もいよいよ後半戦。演じるキャラクターの印象については何か変化はありましたか。

松田利冴(以下、利冴) 千夏は第一印象から大きな印象の変化はなかったと思います。「ロミオとジュリエット」で星野さんたちと一緒のグループになったときに(第六幕)、奈良っちにじゃんけんで勝って、「勝っちゃった」って顔をするんですね。千夏はこういうときに喜びよりも引け目を感じてしまうような子。第一印象から千秋に比べて控え目な子だと感じていたので、第六幕も「やっぱり」という印象でした。

松田颯水(以下、颯水) オーディションで最初に資料をいただいたときは、姉の千夏が千秋のために一度、紅華の合格を蹴ったという設定が飛び込んできて、常に負い目を感じている子なのかなと思ったんです。でも、原作を読ませていただくと、不意に陰りのあるシーンも出てくるけれど、基本的にはとても明るく感情をしっかり表に出せる子だとわかって。アフレコに入る前にちょっとした印象の変化がありました。

大地 星野はサラブレッドですし、見た目もカッコいいので、気が強くてプライドの高い子なのかなと思っていたんです。でも、サラブレッドだからこその「私はこうあるべき」というプライドと、「こうあるべき」を打破したいという理想の両方があると感じて……。ただ誇らしげだったり、驕(おご)りがあったりするキャラクターではないんだなと思いました。その意味では、一番感情を剥き出しにする子だなと思いますし、泥臭さを感じます。

――演じる上で大切にしていることはどんなことですか?

大地 当たりの強い子ではあるんですが、決して相手を萎縮させたいわけではないんです。適宜ツッコミを入れるキャラクターでもあるので、ときどきコミカルさを出して語気のバランスを意識するようにしています。年齢感もあくまで十代なので、変に大人びないように年相応の女の子感を出すようにしました。

利冴 千夏は素直さ、ですね。憧れの場所に来られた喜び、素敵なものを見たときの胸の高鳴りみたいな感情をストレートに出すようにしています。私自身は何かを熱烈に推すという経験がなかったので、最初はなかなか掴むのが難しかったんですけど、カッコいいものに出会ったら素直にカッコいいと表現できる女の子であることを意識しました。

颯水 私はりっちゃん(利冴)とは逆にアイドルが大好きなので、千秋を演じるときはその感情を真っ直ぐ出せばいいのかなと思いました(笑)。それから、私の場合、演じているうちに声が低くなることが多いので、ちょっとハイな気持ちで演じるようにしています。

大地 沢田姉妹って、一緒に声を合わせることが多いよね?

颯水 確かに、「せーの」で一緒に声を出すことが多かった。でも、過去にもそういうことはあったんですけど、「せーの」を言わずにお互いの空気感を察して同時に入ることが多かったんです。でも、感染症対策でお互いの間にパーティションが入るようになってから……。

利冴 お互いの気配が読めなくなってね。

颯水 音響監督の長崎(行男)さんに「なんか揃わないよね」って言われました(笑)。

利冴 板が1枚あるだけで、こんなにお互いのことがわからなくなるんだって不思議な気持ちになりました。

――ではストーリーについても伺えれば。まずは星野についてですが、ここまで彼女は杉本とはまた違ったリーダーシップを見せてきましたよね。

大地 入学ギリギリの年齢で合格していることもあって、一番勝手を知っているお姉さんなので、自分がしっかりしなきゃという気持ちがあったんだと思います。ただ、それが最初はうまくいかなくて、きつく当たりすぎちゃうところがあって……。

颯水 少し焦っている感じがありましたよね。他の子たちは徐々に紅華のことを知っていけばいいって感じですけど、星野の場合はそんな悠長なことを言っている時間はないって。

大地 そうそう。だから第三者の視点から見ると、星野はストイックだなと思う一方で、その言い方だと誤解されちゃうよ~という複雑な気持ちになります。

利冴 でも、お芝居については沢田姉妹よりもずっと先を進んでいるのが星野だと思うんです。それはたいちょー(大地)のお芝居からもすごく感じました。第六幕の「ロミオとジュリエット」を一緒に録らせていただいたんですけど、星野のロミオを聞いた瞬間、本当に舞台が始まったかのような感覚になって……。

大地 え、嬉しい!

利冴 きっと千夏も同じ気持ちで役に入ることができたんだろうなって思うくらい、私もスムーズに演じられました。たいちょーがすごく落ち着いて演じてくれたことで、自分も落ち着いて演じられましたし、星野のロミオに引っ張ってもらったなって。

颯水 実際、私とたいちょーが同期で、りっちゃんは後輩だもんね。

利冴 そうそう、たいちょーとは養成所で同じクラスだったことがあって。当時、たいちょーはすでに事務所に所属されていたんですけど、その芝居をよく見ていたんです。当時を思い出しながら、また引っ張ってもらっているなって気持ちになりました。

――そして第8幕では星野の過去が描かれました。

大地 辻陸斗役の畠中(祐)さんと一緒にアフレコできたのが嬉しかったです。二人の心が近づいて、離れて……という絶妙な距離感が描かれるので、その距離感、温度感をしっかり伝えたいと思い、絶対に陸斗役の方と一緒に収録したいと思っていたんです。おかげさまで一緒に収録できて、縮まっていく二人の心とだんだん上がっていく二人の体温を表現できたんじゃないかなと思います。

利冴 このインタビューの時点だとまだ映像を見られていないので、すごく楽しみです。

大地 「これが恋か!」って思うよ。甘酸っぱいし……もう、たまらなかった(笑)。

颯水 確かに、この二人みたいな関係って永遠にときめくよね。ベタベタするわけでもなく、かといって無関心でもなく。二人とも素直なんだけど、言葉にはしていない……みたいな。

大地 そうなの! お付き合いしているわけではなく、うっすらお互いの気持ちを感じているような状態で。結局、決定打になる言葉を言えないまま離れてしまう……。この関係がいいんですよ。

利冴 「かげきしょうじょ!!」の中でも屈指のピュアピュアエピソードだよね。

大地 校歌を歌うシーンも「つらい!」って、泣きそうになりながら歌いました。恥ずかしいので泣きませんでしたけど(笑)。アフレコが終わったあとに、畠中さんと「いい話ですね……」って話して、お互いに達成感に包まれながら帰りました。

――一方で、ダンススクールでの山岸との再会というチクッと胸に刺さるシーンもありました。

大地 サラブレッドだからといってコネが働くわけでもなく、実力がなければ落ちるものは落ちるという残酷な世界なので、ぽっと出てきた子に先を行かれることもあるんです。それがわずかなシーンの中で描かれ、星野が掘り下げられたのがこの作品のすごいところだなと思いました。このエピソードで星野を応援したいと思う方が増えたら嬉しいです。

――そして、第九幕では千夏と千秋の関係性が掘り下げられましたね。

利冴 原作を読ませていただいたときに、あまりにも双子の気持ちがリアルに描かれていたので、斉木(久美子)先生にお会いしたときに「双子なんですか?」と伺ったんです(笑)。実際は双子ではないそうですが、双子がよく直面することが丁寧に描かれていて、私たちとしては共感しかなかったです。

颯水 千夏と千秋の関係性が私たちの境遇とすごく似ているんです。私の演じる千秋とりっちゃんの千夏が逆転したような感じで。先ほどもお話ししましたが、私のほうが先に声優業界に入り、りっちゃんがあとからだったんです。

――最初は合格できなかった千秋を先に声優業界に来た颯水さんが演じ、先に受かっていた千夏をあとから声優業界に入った利冴さんが演じているわけですね。

利冴 そうです。だから、おうちに合格通知が1通しかこない怖さとか、「うわー!」って(笑)

颯水 私たちはどちらかが先に進みながらも結果として同じ道に進むことになったわけですが、かなり境遇が似ているなと思いました。

――お二人からすると、千夏も千秋もものすごく共感度の高い二人なんですね。

利冴 私は千夏に性格も似ているなって思います。颯水と千秋も似ているんですよ。本当に境遇こそ逆というだけで。私たちは颯水が先に受かりましたけど、たぶん颯水がそのときに落ちて私が受かっていたら、たぶん颯水は千秋と同じように泣いていたと思います。

颯水 「なんで利冴だけが受かるの、なんで私がダメだったの!?」って、きっと泣いていたと思う……。だから、この二人は並行世界の私たちみたいなものなんです(笑)。

大地 私なんかは双子の境遇がどういうものなのかあまりわからずに生きてきたけど、千夏も千秋も一緒にされたり、比べられたりして、本当につらかったんだろうなって。

颯水 でも、より似ているなと感じるのが8割はお互いのことが好きってところですね。コンプレックスがあってもそれはほんの2割あるかないか。沢田姉妹もそうですよね。基本的に一緒にいるのが当たり前だし、一緒にいて楽しいという気持ちのほうが大きくて。でも、何かがあったときに負のスイッチが入ってしまう。

利冴 同じ部屋にはいられなくなっちゃう感じだよね。

颯水 あれが、「わかる~!」って(笑)。

大地 じゃあ、本当にリアルなやりとりだったんだ(笑)。

――大地さんから見て、千夏と千秋はいかがですか?

大地 正直、最初はライトでポップなキャラクターだと思っていたんです。そう思って読んでいたので、アニメでも原作でも巨大な感情をぶつけられたという印象がありました。

颯水 確かにみんなの前でケンカするシーンも、わかるんですよ。他人同士だったら「言い過ぎたかも」「みんなもいるし……」って、ストッパーを掛けられるかもしれないけれど、家族同士になるとまわりに人がいようと遠慮がなくなるんです。

大地 血が繋がっているからこそのケンカだ。

利冴 これも双子あるあるですけど、どちらかが悪いことをするとまとめて怒られるみたいなことってよくあるんです。だから、千夏の「私は千夏であって、千秋じゃない」という反発は重たいなって思いました。ただ、きっかけとしては千夏が好きな女優さんに声を掛けられなかったり、ジュリエットがやりたいって言えなかったりと、一歩引いてしまうところがあったので……。

颯水 ちょっとこじらせちゃったところがあるよね。

利冴 でも、それはすごくわかるなって。私たちも颯水のほうが明るくて、前に前に出る子だったので、羨ましいな、颯水はいいよなって思うことがありましたし、一時期は颯水の真似をしていた時期もありました。

颯水 そっか~。でも私は私で、「かげきしょうじょ!!」のアフレコでりっちゃんは千夏のモノローグとか出番がいっぱいあっていいなって思ってた(笑)。

大地 双子ならではだね。面白いな~。

颯水 なんだか私たちの話ばかりだけど(笑)。

利冴 でも、本質を見抜いたキャスティングですね。私たちは仕事を始めるようになってから各々のアイデンティティがすごく強くなったので、きっと千夏と千秋もこれからそれぞれのアイデンティティが強くなっていくと思いますし、それを見てみたいです。

――そして、皆さんはEDテーマ「薔薇と私」を歌唱されています。第8話では1番の星野のソロ、第9話では2番の沢田姉妹によるデュエットが披露されました。

颯水 たいちょーが完璧な男役でした。

利冴 わかる! 最初にデモ音源を聴いた瞬間、たいちょーに似合いそうなメロディラインだなって。一緒に歌えることになって、すごく嬉しかった。

大地 二人もよかったよ~。完成した音源を聴いてすぐ二人にLINEしたんです。

颯水 外だったからりっちゃんからイヤホンを借りて聴いて、泣きながら歩きました。

利冴 私が先に聴いて泣きそうになっていたら、隣で泣きだしちゃって(笑)。

颯水 それぐらい素晴らしい曲だなと。

――歌詞もそれぞれのキャラクター性が入っていて、物語とすごくリンクしますよね。

大地 歌劇風に歌うというのはプレッシャーがありましたけど、1番、2番ともにそれぞれの精神が歌詞に乗っていて、演劇をしているような気持ちで歌えました。

颯水 千夏と千秋は2番から歌うんですけど、双子とはいえ同じ感情で歌っては二人いる意味がないなと思ったんです。実際、ディレクションでも「ここはもうデビューしたあとの本当にステージに立って成長した姿だと思ってください。声が太くなって感情が前にどんと出るようになってほしい」と、言っていただいて。普段は娘役っぽくふわふわした感じの千秋ですが、「薔薇と私」のときは地に足がしっかりついたイメージで歌いました。

大地 サビのところとか、どっしりした感じが出てた。

颯水 最初は紅華の生徒として役を作っていたから、不安だったんです。でも、「あなたが出したものは全部千秋ですよ」と、背中を押していただいたので、自信をもって力強く歌えました。

利冴 1番が星野のソロで、2番が千夏と千秋なんですけど、一人一人の力強さを見ると星野が圧倒的なんです。でも、千夏と千秋がもたれかかって一つの曲になっているところが「やっぱり双子なんだ」と感じられて、グッとくるものがありました。

颯水 テレビサイズのその先もあるので、ぜひ発売中のシングル(「星の旅人/シナヤカナミライ/薔薇と私」)で三人が歌っているところも聴いていただきたいです。

コラム

皆さんのお仕事(漫画家、監督、音楽、声優など)における「トップスターの条件」を教えてください。

大地

自分自身のことを思い切り愛せて、思い切り嫌える人。
強みも欠点も誰より理解できていないと、なんであれアプローチの仕方がわらかないと思うんです。
ちゃんと自分と向き合い、最終的に自分をいいなと思える人がトップスターになれるのかなと思います。

松田利冴

礼儀が、基本のキだと思います。
新人だとかベテランだとか関係なく、誰にでも分け隔てなく接してくださるスターな先輩方がまわりには多いので、
自分もそういう先輩のようになりたいです。

松田颯水

挨拶と距離感です。
私が憧れるスターの方って、ご挨拶にいくとぱっと立ち上がって、挨拶を返してくださるんです。
そういう方はやっぱり輝いていらっしゃるし、かといってへりくだりすぎることもなく、高嶺の花としての存在感もある。
絶妙な距離感が素敵だなと思います。

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