かげきしょうじょ!!

かげきしょうじょ!!リレー連載 第3回 [野島 聖役・花澤香菜 × 中山リサ役・小松未可子]

――最初に、お二人の役どころについて伺えればと思います。花澤さん演じる聖の印象はいかがですか?

花澤 原作やアニメを見ている分には、面白い子だなぁと(笑)。でも、腹黒い部分があって厳しいことをバシバシ言ってくるので、もし自分が後輩だったらちょっと怖がるかもしれないです。リサに教えてもらいたいだろうなって。

小松 確かに作品の外側から見ていると、聖のキツめの発言も何か意図があるんだろうなって思えるけど、言われている本人からしたら怖くてしょうがないよね……。私も絶対に萎縮しちゃうと思う。

花澤 今日もこの先輩と一緒なのかって胃が痛くなりそう! ただ、聖には聖なりの考えや思いがあって。鋭い発言も相手をちゃんと認めているからこその言葉なので、本当は悪い子じゃないんだろうなと思うんです。内面を知れば知るほど魅力的に見えてくる子ですね。

――小松さん演じるリサについてはいかがでしょうか?

小松 何事も基本に忠実な子なんだなと思います。きっと理想の先輩像があって、そうあろうと自分を客観視しながら後輩に接しているイメージですね。その真面目さや責任感の強さは彼女の語気の強さからも感じられます。

花澤 確かに、リサはまっすぐな努力家って感じだよね。歌劇団を目指す学生としても、先輩としても、その頑張り方に筋が通っているというか。

小松 真面目ではあるけど、逆に言えば、聖のように機転が利かないところがあって。自分のことでいっぱいいっぱいになることもあるんだろうなと思います。

――二人はいつも一緒にいるイメージですが、性格は全然違いますよね。

小松 そうですね。でも、やっぱり聖のほうが一枚上手だなと感じさせられるところがあります。過去の回想でも聖にはっとさせられることを言われていましたし。

花澤 何か指摘するにしても、それをわかりやすく言わないのが、「あぁ、聖だなぁ」って。なかなか本心や本音が見えないんです。間違ったことは言っていないんですけど、言われた側からすると、その言葉を受け取る前に反感を持ってしまいますよね。嫌なことを言われたなって気持ちが先に来ちゃうだろうなって。

小松 リサが目指していたものとまわりにどう見られているかの違いも、リサ本人がのちのち気づかないといけないことですし、それにいち早く気づける聖はすごいと思います。でも、それをズバッと言ってしまうのかって。

花澤 いきなり言うのはすごいよね。でも、この仕事をしているとそういうことってあるよねって、アフレコのときに話していたんです。私たちも似たような世界だし、特に子役の頃なんて、そういうこと言われたような気がするって。

小松 声優の仕事でも「オーディション何受けるの? そっち? 絶対こっちのほうがあってるよ」みたいなこと、言われるよねって(笑)。

花澤 的確かもしれないけど、オーディションの直前に言われても……みたいな(笑)。

小松 それでちょっと落ち込んじゃうとか。そういう意味では、リサの気持ちはよくわかりました。

――アフレコの感触はいかがでしたか?

花澤 やっぱり原作のスピンオフを読んでいてよかったなと思いました。

小松 私もそうですね。スピンオフのおかげで役作りのベースができたなと思います。

花澤 第三幕までだと聖は“いびりヒロイン”に見えるかもしれませんが(笑)、決して後輩をいびるのが好きなわけではないんだなって。それをわかって演じるのと知らないで演じるのでは全然違ったと思います。でも、すごく疲れました。心にグサグサ刺さる言葉を言うのって、こんなに体力がいるんだなって。いつもピリピリしていないといけないし、内容も重要なことばかりなので。毎回、神経を張り巡らした感じがありました。

小松 リサはストレートに物言う先輩ではありつつも、厳しすぎるわけでもなく、言葉が尖っているわけでもないので、過剰に体力を使うようなことはなかったです。ただ、後半に全身全霊の言葉を放つ場面があって。そこにはリサの願いや想いが強く込められているので、すごくエネルギーがいりました。

――音響監督から何かディレクションはありましたか?

花澤 シーンによっては「もっと芝居がかっていいですよ」というアドバイスをいただくことがありました。確かに、聖って日常会話の中でも自分自身を演出しているようなところがあるんですよね。意地悪な言葉なのにまろやかな話し方だから逆に怖い……そんなイメージを大事にしました。

小松 最初の頃に「(後輩たちとは)初対面のニュアンスが強く出たらいいですね」と言われました。予科生からの印象もあるので、最初はちょっと厳しそうな空気感が出るようにしてほしいと。大きなディレクションはそれぐらいだったと思います。

――さらさと愛に関わることの多い二人ですが、後輩との接し方についてはどうご覧になりましたか?

花澤 聖は、さらさと愛に対する態度が全然違うのが面白いですね。中盤以降、さらさに厳しく指導するシーンがあって。でも、それはさらさに何かを感じているのと、打たれ強い部分を評価しているからだと思うんです。さっきもお話ししたように、聖はズバッと言うけれど内容自体は間違っていないので。あとはそれを後輩たちがどう受け止めてくれるか、なのかなと。

――聖は愛の所属していたJPX48のファンでもあります。

花澤 推しは違うんですけど、やっぱり愛ちゃんに対しては特別な思いが多少は入っていると思います。アイドルとしてどれだけ頑張ってきたかもわかっていると思いますし、リスペクトもあるんだろうなって。

――リサはいかがでしょうか?

小松 さらさからはいい刺激をもらっているなと感じます。オスカルには絶対なれないとリサが言っても、さらさは「絶対なれない、なんてことはない」ってはっきり否定して。逆にリサがハッとさせられる場面は、いい影響関係だなと思いました。

花澤 リサと一緒にいるときのさらさがかわいい。

小松 これぞ後輩って感じがいいよね。先輩の言葉を真っ正面から受け止めて、落ち込んだり、喜んだりする姿がかわいかった。

花澤 さらさはメンタルも強いなって。何でも前向きに、ひたむきに頑張れるのは一つの才能なので、ただただ羨ましいです。

――さらさのような後輩が実際にいたらどうですか?

小松 全部持っていかれそう。

花澤 わかる~。先輩の前でも萎縮せず、自分の表現を追求できるだけでもすごいのに、天性の無邪気さでどんな逆境もはねのけそうだし、もうすでに大舞台に立てるんじゃないかなって思わされました。

小松 逆に言えば主役にしかなりえない輝きが強いから、今はそれが欠点なのかも。でも、唯一無二のスター性を持っているのはやっぱり羨ましいですね。

花澤 近くにいてくれたらいい刺激がもらえそう。

――愛はどうですか?

花澤 愛ちゃんはさらさとは別の意味で貫禄があります。

小松 経験値が違うもんね。

花澤 うん、経験値の差は大きいよね。いろいろと思い詰めたり、考えすぎたりする場面もありますけど、それをちゃんと背負えるのが愛ちゃんの強みだなって。もし一緒に舞台に立ったらきっと頼もしいんだろうなって思います。

小松 アイドルを辞めたのも、炎上したことがきっかけではありますが、ちゃんと自分自身に向き合って「自分には、これはできない」って冷静な分析ができていたと思うんです。自分にあるもの・ないもの、できるもの・できないものをこの年で冷静に分析しているのはすごい。一方で、さらさのように心のままに生きられないもどかしさも感じていると思うので、これからどういう風に心を剥き出しにしていくのか楽しみです。

――声優のお仕事でもいろいろな先輩後輩関係があると思いますが、お二人が理想とする先輩像はありますか?

花澤 事務所内の先輩でも、アフレコ現場の先輩でも、近くにいてくれるだけで安心できる先輩が多いんです。緊張感と同時に、安心感も与えてくれるような。それもあって後輩と一緒にいるときは、相手がリラックスできるような先輩でありたいなと思っています。ただ、その手段がお菓子をあげるくらいしか思いつかないんですけど(笑)。

小松 わかる! 「飴いる?」みたいな(笑)。

花澤 それで「ごめんなさい、もうあるんです」って言われたりね。でも、緊張して小さくなっているような後輩がいたら、ちゃんと気遣える先輩ではありたいですね。

小松 ただ、自分が新人の頃は「ここはこうしたほうがいいよ」と教えられて助けられることがあったのに、いざ自分が先輩になると躊躇してしまうんですよね。自分は人に教えられるレベルなのだろうか、と一瞬考えてしまって。

花澤 教えるのって難しい。

小松 マイクワークとか基礎的なことしか教えられることってないのかなって。それだけでもすごく緊張するし……。だからリサも聖も本当にすごいなって思います。直属の後輩とはいえ、教えるべきことをはっきり教えられるので。

花澤 二人とも堂々としているもんね。私なんて「マイク……あそこに入ったほうが、もしかしたらよかった……かもね」って、恐る恐るだもん。

小松 しかも、意外と伝わらないことも多いんです。実際、自分が新人の頃を振り返っても先輩のアドバイスを理解して生かせていたかというと、そんなことはなくて。何年か経って、あのとき言ってくださったのはこういうことだったのかと、その親切さに気づくことが多いんです。だからアドバイスをするときは、わかってもらえないから教えないではなく、いつか伝わったらいいなという気持ちで、勇気をもって優しく伝えるようにしています。

――そして、10月27日に発売されるBlu-ray第3巻には聖のスピンオフ・ドラマCD「絶対ヒロイン」がつき、11月24日に発売される第4巻にはリサのスピンオフ・ドラマCD「99期生の卒業式」がつきます。こちらの収録はいかがでしたか。

花澤 聖のドラマCDでは、JPX48への思いや聖がどう救われていったかが描かれ、聖が他人にも自分にも厳しい理由がわかると思います。それから、村瀬 歩くん演じる悠太という聖の親友にも注目していただきたいです。村瀬くんの演技も相まって、本当に素敵なキャラクターになっています。

小松 リサのスピンオフはリサ編というよりも、私はリサ視線の聖編だと捉えたので、聖のことが愛おしくなりました。リサは、聖との相性が悪いと感じたことが少しはあったと思うんです。それでも認めざるを得ない聖のすごさ、そして聖に対するリスペクトが見られると思います。最後はちょっと泣けました。

――ありがとうございます。では最後に、第四幕以降の見どころを聞かせてください。

花澤 聖ちゃんは引き続き腹黒い場面もありつつ、チャーミングなところも出てくるので、マスコット的なかわいさを感じていただけたら嬉しいです。慣れてくると、そう見えてくると思います(笑)。

小松 ここから予科生たちが己自身の戦いに飛び込み、まわりと切磋琢磨していくので、どう成長していくのかぜひ見守っていただきたいです。リサもさらさを中心に後輩たちと関わっていくので、リサ視点でも見ていただけたら嬉しいです。

コラム

皆さんのお仕事(漫画家、監督、音楽、声優など)における「トップスターの条件」を教えてください。

花澤

隅々まで行き届いている人だと思います。
アフレコ現場で身震いするくらい圧倒されるときって、こんなところまで細かく役作りをされているんだって感じるときなんです。
そういうときって、役者さんが喋っているのではなく、完全にキャラクターが喋っているように聞こえてくるんです。
トップに立つ人ってこういう人なんだなと思います。

小松

常に探究心を持ち続けている方ですね。
声優という仕事においてもそうですし、声優の垣根を越えて新しい挑戦ができる方もそうだと思います。
ジャンルを飛び越えていける方って、声優以外の仕事をしっかり声優の仕事にフィードバックして、
さらなる成長を見せてくださる方ばかりなので、その探求心や貪欲さを見習いたいです。

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